これ以上ないくらい分かりやすくズバリなタイトル『老害の人』!
まず最初は、メイン老害である『社長から引退したじっちゃん』と、その家族や周りの人の人柄や状況を丁寧に描写しています。
正直、ここはまだ準備運動。
家族それぞれの性格や、生き方についてすったもんだ等はあるものの、よくある展開かな。
しかし、この準備運動的な序章が終わると怒涛の勢い。
「会社の従業員に迷惑かけないで!ここはデイサービスセンターじゃないのよ!」
「引退した会社の取引に口出しせんでくれぇ~ひぇぇ!!取引が白紙になった…」
「もういい加減にしてよ!老人は老人同士で仲良くやって。現役世代を巻き込まないで頼むから!!」
「うわぁ、会社は老人ホームじゃないんだけど?えっ?密やかな逆襲?」
まさにジェットコースターロマンス(?)
昔取った杵柄(リーダーシップ)をぶんぶん振り回し『老害組合』ならぬ『老害サロン』が完成!
しかし、めでたしめでたしで終わるはずもなくて…
老人グループを中心に目まぐるしく状況は変化していく。
時にクスッと笑えて。
時にグサッと胸を抉られて。
時にほろりとしっとり。
そんな味わいの一冊でした。
引退してまもなくの『老害レベル』としばらく経ってからの『老害レベル』が強烈に違うのがリアル。
ひとくくりに老人と言っても、65歳・75歳・85歳・95歳…全然違いますからね。
当たり前だけど、誰でも歳は取る…
だからと言って体にガタが来る(病気にしろ怪我にしろ)時期は人それぞれ。
明日お迎えが来るかもしれないし、来ないかもしれない。
そんな不安定な不安を抱えながら『老害の人』は今日も生き抜く。

個人的に『亡くなる』を『お山に引っ越す』という表現がいいなと感じました。
日本らしいというか。何というか。
最後に1つだけ。
せっかくなので、欲を言えば『老害の人』のタイプの幅がもう少しあればもっと面白いのにな、と思ったり。
よろしければ『老害の人』是非!


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