『定年退食』の感想とフィクションで済まないリアルさ

藤子・F・不二雄先生の作品が昔から好きです。
古くはドラえもんから。ある程度大きくなってからは他の作品も。
全部を読破している訳ではないニワカが語って恐縮ですが、中にはとてもビターなお話もあります。

例えば『定年退という作品。


主人公は74歳のおじいさん。
優しい息子夫婦と同居していて穏やかな生活をしています。
パッと見、いわゆる何かの宣伝パンフレットに載っていそうな『幸せな老後』のモデルのよう。

医療技術、機械技術等は全体的にとても発展しているし、ところどころに優秀なロボもいる世界観。



…ただ、食料が十分に足りていない世界。

食卓や間食に出てきた食料を保存して『節食』するほどの。

この『食料危機』が原因で、ある一定の高齢になると生きていく為に必要なものに国が制限をかけるシステム。
一応、今までと同じように暮らせる権利を得る宝くじみたいな抽選がありますが、倍率は高いです。
外れると自分自身や家族で何とか出来ない場合は、相応の末路が待ち受けているんでしょう。
…その末路の詳細描写は描かれてはいませんが、おそらく悲惨。


こんな情勢でも、主人公は生に対して悲観的ではなくて、むしろ前向き。
でも、息子夫婦の負担には出来るだけなりたくないという意地らしさも垣間見えます。

どんどん『食料危機』が悪化する中、やがて国の政策も過激にならざるを得なくなってきます。


主人公が、ラストに話す言葉には何とも言えない気持ちに。


個人的に印象的だったのは…
教育番組っぽい歌のお姉さんが歌う、歌詞。
明るく楽しく歌っているけれど、内容が…ゾク。

皆様も、ご興味がありましたら是非読んでみて下さい。

副作用でちょっと塩コーヒーを飲んでみたくなるかも…?(冗談です)


ちなみに私は
『藤子・F・不二雄SF短編【PERFECT版】(2)定年退食』
を電子版(kindle)で読みました。
表題の他にも沁みる作品が収録されているので、よろしかったら。

作者が1996年に亡くなったことを考えると、多少古い雰囲気、見解があるとはいえ、凄い発想だと思います。
先見の明と言ってもいいかもしれない。


~ここからは余談~

私事ではありますが、これを書いている現在の私は故・祖父から母へと相続された不動産の処分について携わっています。
その中には、決して少なくない農地群が存在。


農地は、そして食料は大事…というのは皆様の共通認識だと思います。


けれど農業の担い手不足、そして固定資産税や農地の維持費等を考えると遺された立場としては正直非常に頭を悩ませます。現在進行形で。


そして、今秋遺族による最後の米の収穫を済ませたのですが、買取価格が安いんです。
地域によって違うと思いますが、専業で生活出来るの?大農家じゃないと無理じゃない?という感じです。
皆様がお住まいの地域で調べてみると、店頭小売価格との差にビックリしますよ…(>_<)



農業を農家を守る!という言葉と、やっていることが違う気がする…
食物が生み出される大地を作ったり、守ったりする環境への取り組みにしても…成果はどうなのだろうか?
環境と言えば…レジ袋有料云々はやったけどねぇ…(2021年時点ではまだ続いています)


どこかズレているような?そして何かを変えようという行動や意識が希薄…!?
口だけ出して、効果的な政策やお金も出さないのでは、このような現状になるのも当然かな。
個々人が出来ることには限界があるということを考えて欲しいですね。
…自分語り、失礼致しました。

短編ながら濃密で、色々なことを考えさせられた味わい深い作品でした。




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