納棺師の求人を見て感じたこと

以前私がファミレスに行った時、中年女子グループの会話が聞こえてきました。


「知り合いに納棺師がいるんだけどね」


「その人が言うのよ。遺体は裏切らないから良いって」


「生きてる人間だといつ裏切られるか分からないし、何を思っているか実際のところ分からないでしょ?それがとても怖いみたい」


亡くなれば、確かに何も物言わぬ、口なし。皆同じです。
ただの塊となれば…貴賤も関係なく、等しく。


自分の人生を生きている以上は、望む望まないに限らず、人に対して気を遣うことが多いですよね(言いなりにならなくても)
見解の相違にイライラしたり。お互いに勘違いをしたまま、微妙な時が過ぎたり。
そして結局埋まらない決定的な溝を生んだり。
皆様も、幼い頃、学生の頃、社会人、引退後、様々な場面で少なからずあったと思います。
私ももちろん、赤面モノの墓場まで持っていきたくなるような出来事もありました。
他人にとっては笑い話でも、自分にとってそれがドギツイもので、なかなか回復出来なかったり、もはや回復不可の傷だったりすると…
やっぱり重度の人間不信になるんだろうと思います。

しかし…仕事上では生身の人間との関わりが少ないとはいえ、『納棺師』は、精神的な割り切りや覚悟がないとなかなか出来ない仕事です。
私もこの年齢ですので、納棺された遺体と対面して故人を見送ったことは数度あります。


正直申し上げて、身内の遺体であってもゾクリと思ってしまいます。
この記事を書いている現在からすれば、2021年7月に祖父を見送ったばかりなのですが、やはりどうしても『人』ではなく『人っぽいモノ』なのです。
霊とか宗教とかそういうものは抜きにして、それは事実で。
…プロとして見知らぬ他人の死に化粧や身なりを整えるのはやはり凄いことだなと感じるのです。


私はこのファミレスでの会話で興味を持ちまして、少し『納棺師』の求人情報を調べてみましたが…
給与の面では、意外にもそんなに高くはないんですよね。
月収30万いかないくらいの求人が多かったです(もっと高いかと思っていた…)
こう言っては何ですが、安く見積もられている仕事…?と感じてしまいました。



率直に言うと、ご遺体をお清めしたり、お化粧、身なりを整えたりする…かなり人間の生々しいところをお手伝いする割には。
安くてびっくりしました…
恐らくこの納棺師のお仕事をしていれば、中にはこのご時世、大変な状態(具体的には言いませんが)のご遺体もあり、必ずしも綺麗な状態での仕事スタートとは限りません。
私の祖父のように、亡くなってしばらくしてご遺体から血が出てしまうこともあるでしょう(遺体を冷却することで収まります)

なので、その…淡々と書かれていた求人情報の待遇欄に何とも言えない気持ちになります。

生まれた瞬間、毎日、毎秒…それぞれ全然違う生き様をしてきた方々の…
でも…同じ死の終着地点を目の当たりにする職業。


その瞳に宿るものは何だろう?そんなクサい感慨が私の心に沸きました。


仕事の悩みの大部分は人間関係というけれど『納棺師』も『人間だった仏』に向き合うという時点で、かなり重い。

すみません、本日は暗いな…(^^;)




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