ファンタジーっぽいタイトルですが、内容は実にリアルでシリアス。
社会派な映画です。
ざっくり内容を話すと…
父から運送会社を継いだ社長である主人公。
義理と人情がある経営をしていて頼もしい中小企業の社長!という感じです。
しかし、ある日大事件が起きます。
走行中のトレーラーが脱輪していまい、空中へタイヤが舞う。
それがタイトルにある『空飛ぶタイヤ』に繋がるのですが…
そのタイヤが子供連れの母親にぶつかり死亡してしまいます。
トレーラーの整備不良か?最初はそれを強く疑う社長。
しかし、違う。
では、なぜこのようなことに?
『空飛ぶタイヤ』が命を奪ってしまった原因を突き止めるべく、愚直に走り続けます。
そもそも車自体に欠陥があるのでは?
話が進むにつれて、大手企業である『ホープ自動車』のリコール隠しが明らかになっていきます。
大企業ならではの部署同士のしがらみや社内政治をたっぷりと見せつけてくれて、生々しい。
実際、大企業は安定(しているように見えるのも含めて)と引き換えに、個々人が駒でしかないのが作中で良く分かります。
駒の自分がどう立ち回るのか、それが一番大事になってしまうのは当然なのかも。
この映画に出てくる『ホープ銀行』も同じですね。
きちんと仕事をせずに、個人的付き合いやゴマすりに頼ってしまう銀行マンが目立つ。
もちろん良い銀行も出てきますけど。
主人公が足で稼いだ、『ホープ自動車』という諸悪の根源に泣かされた会社からの情報。
その『ホープ自動車』からの半ば内部告発。
『ホープ銀行』の最終的には毅然とした対応。
他、主人公の会社の従業員、家族等たくさんの関わりがあっての大団円!
…とあらすじをこのようにザッと書くと、ご都合主義の平和ボケ映画では?と思えてしまう人もいるかもしれない。
が、違います。
派手さはない。
奇天烈な発想も術もない。
ただ…淡々と地道に探り、考えた先の結果。
かたや情熱からの行動により、一歩進んで二歩退がるようなもどかしさが現実味を感じます。
だからこそ、心が動く。
特に最後のあたりのシーン。
主人公ととある人物が事件の追悼をしているのですが…
『お互いに二度と会わないだろう』
と話します。
それがお別れの言葉であるのに、妙に清々しくて好きですね。
様々な人の考えや行動が入り混じって大きな奔流になる様は圧巻!
よろしければ『空飛ぶタイヤ』是非ご覧下さい。
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